「そういえば、火原と何かあったのか?」
「え?」キョトンとする香穂子。が、急に思い当ったように、顔を赤くする。「いえ、別に火原先輩のことじゃないですけど」
『「火原先輩」、ね。ふうん』
 少女と火原との思いに温度差ありと見た途端、何故か気分が軽くなる。
「まあ、俺には関係ないが……お前が元気がないと、苛め甲斐がないんだよ。早くいつもの元気を取り戻して、キャンキャン騒いでろ」
「い、犬じゃありません!」真っ赤になってわめく少女に、しばらくの間退屈を紛らわす。
「ま、じゃ、せいぜい頑張れよ」去ろうとした途端。
「あ、あのっ、先輩!」
「何だい?」
 香穂子は、少し困ったような顔で。「あの……どうして、火原先輩のこと、聞いたんですか?」
 ぴく、と柚木の肩が揺れる。「……何でそんなことを?」
「え、あ、あの……その、もし火原先輩、元気ないとか、怒ってたりしたら……」
「何?お前、火原を苛めたの?」
「ちっ違いますっ!」怒鳴るものの、気まずそうに顔を反らせる。「……何でもないです」
 自分は関係ない。そう言われているようで、柚木は微かに息苦しさを感じる。
「そう」面白くなくて、その場を後にする。
 別に、あいつと火原がどうなろうと、関係ない。むしろ、相棒の調子の方が心配だ。
 そのはずなのに、この普通科の少女に、彼女が紡ぎ出す音に、常に心を乱されている。
『……どうでもいい事だ。火原の恋が成就しようがしまいが、あいつが誰に惚れようが。ただ、あいつは俺の暇つぶし、いいおもちゃでさえあればいい』
 そう自分に言い聞かせ、頭を切り替える。
 今から、セレクションのための、ピアノを担当する少女との音合わせだ。
 白い王子としての仮面を被り、いつもの白い笑みを素早く顔に乗せると、待ち合わせの練習室へと向かった。

 

 徹底的に調子を崩した火原は、セレクションでも散々な演奏で終わった。
『まったく、見ちゃいられないよ。あいつも……日野も』
 火原の不調の原因は、香穂子の不調だということは、一目瞭然だ。
『日野の原因は、別にあるみたいだがな。それも、いつの間にか、勝手に立ち直っているし』
 落ち込んだ原因がわからないが、立ち直った原因は月森あたりか。そう考えると、また妙な苛立ちに襲われる。
 その頃、火原もまた、音楽への立場と、自分の香穂子への想いで、浮上できずにいた。どうしていいかわからずに、心の中でもがくばかり。
『おれは、何がしたいんだろう……香穂ちゃんも、音楽も、一体おれはどうしたいんだろう……』
 少女への想いは募るばかりなのに、自分には彼女のために何もできない。
『おれが何もしなくても、香穂ちゃんはちゃんと立ち直った。おれは、じゃあ、何ができるんだろう』
「火原っ!」
 はっと我に返ると、柚木が自分の前に回り込んでいた。
 バチバチバチッ!
 柚木のバリヤーに激突した黒い球は、激しく火花を散らす。
「ぼーっとしてないで!」
「あ……あ、ああっ!」慌てて回り込むと、火原は拳銃をブラックホールに向けてぶっ放した。
 幸いに大した相手でなく、あっさり力を失ったブラックホールは、火原と柚木の集中攻撃に塵と化す。
 やれやれ、と金澤は溜息をつき。「なあ、火原。確かに俺は、しっかり悩めとは言ったけど」「いいかげんにしろっ!」
 怒鳴られた火原はもちろんのこと、金澤も目を丸くする。
 柚木は、いつもの大人しい様子が嘘のように、相棒を睨み。
「火原、君が落ち込んでるのはわかってるよ。けれど、戦いではそうはいかないんだ。僕達は、集中力を欠いたら最後、命を失うかもしれないんだよ?僕らだけじゃない、この学園のみんなを危険に晒すんだ」
 茫然と、いつもの静かな彼とは違う柚木を眺める火原。
 けれど、やがてうれしそうに笑い。「ありがとう、柚木。そして、ごめん、心配かけて。おれ、しっかりするよ」





Gold and Silverより抜粋。香穂ちんが入る前の、3B戦隊。「相棒」いい響きだ〜vvvそして、香穂ちんを巡る3Bの恋愛模様vvv

                              

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース