『くっそ!』チッ、と舌打ち。
「エン」

 はっと振り返る。サラッと長い髪を揺らして、恋人が立っていた。
「どうしたんだ?ライの所に行ってたんじゃないのか?」
「お前はこれからバイトじゃねェのかよ」
「すぐ行く。……どうかしたのか?」
 自分のことを心配してくれてる。そんな些細なことで、今はえらく気分がいい。
「いや、何でもねェよ」
「……。エン、その、明日は暇か?」
「ん?ああ、明日はバイトねェから、ヒマっつえばヒマだけど……」
「じゃあ、一日付き合ってくれないか?」
 青天の霹靂。
 今までリュウの方からデートの誘いなんてあったか、いやない。本当にない。
 こんな一生に一度あるかないかの機会を逃してたまるか!
「行く、行く行く!」
 と、リュウはホッとしたように笑った。
 久しぶりかもしれない、自分に向けられた笑顔に、思わず見蕩れていると。
「じゃあ明日は早いからな」





エンとリュウのこどもシリーズ最新刊です。誕生日に間に合わなかった(泣)リュウちゃんBDネタの他にもう一本。


                              


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