キエナイ イタミ 参




君と僕
近いようで 近くない

ねえ 二人の距離を縮めてしまいたいよ

・・・・・
でもわかっているんだ
そんなの無理だって


だって君は


僕じゃないから





迫り来る閃光がとてもきれいだった。
小さく息を吐く。


きれいだな・・・


自分に放たれた雷のなんと美しい事か・・・・と心の中で呟く。
瞼を閉じてもその輝きが差し込んでくるのを、花月は感じていた。


誰かの声がする・・・・



ドォォォン・・・・


凄まじい爆音が周囲に響き渡り、土煙がもうもうと立ち込める。
「花月さまぁぁぁ!!!」
風雅のメンバーが花月の名を叫ぶ。
ただ、事の成り行きを見守っていた朔羅は弾かれたように花月の元へ走った。


どうか・・・・無事でいて・・・・


そう心の中で祈りながら、朔羅はふと足を止めた。
自分より先に駆けつける筈の弟が側にいない。
振り返り、周囲を見回す。
「十兵衛・・・・?」
嫌な予感がする。


まさか・・・まさか・・・・


鼓動が一層激しくなっていく。
「朔羅様!!」
自分の名を呼ばれて、朔羅が振り返るとメンバーの一人が俊樹を支えて立っていた。
「俊樹・・・・どうして?」
肩で辛そうに息をしながら俊樹は呟く。
「花・・・・月・・・は・・・・」
そう言われて朔羅はもう一度雷帝と花月の方へと視線を向けた。
先ほどまで巻き上がっていた土煙が収まりかけ、徐々に人影がはっきりしていく。

一つ・・・・二つ・・・・

煙を掻き分け、最初に顔を現したのは雷帝であった。
そうしてもう一つは・・・・
「花月!!」
ぴくりとも動かないその影は、花月にしては大きい。
「返事をして頂戴、花月!!」




『花月!!!』


朔羅の声がする

どうして・・・・・?


身体が痛くない
温かい・・・・

何故・・・・?



うっすらと目を開けると、目の前に十兵衛の顔がある。
きつく閉じられた瞳は動かず、十兵衛の両腕はしっかりと花月を抱きしめていた。
「十・・・兵衛・・・・?」
切れ切れに呼びかけても十兵衛からの反応はない。


ドウシテ キミガ ココニイルノ?


湧き上がる疑問は、徐々に花月の思考を覚醒させるのには十分だった。
「十兵衛!!!」
声を上げ、十兵衛の背中に手をまわす。と、同時に掌の中に生暖かいものが触れた。
十兵衛の身体越しに恐る恐るソレを見る。


赤・・・

紅・・・・

アカ・・・・・イ


「血・・・・?」


まさか
まさか・・・・

僕を庇って、あの雷撃を受けたの?
どうして
何故


「ねえ・・・目を・・・開けてよ・・・・」
いつの間にか花月の双眸から涙が溢れ出していた。
「いやだ・・・・どうして・・・・?
 十兵衛・・・・十兵衛っっっっっ!!!!!」

もはやそこには「風雅」の「絃の花月」はいなかった。
十兵衛にしがみつき、取り乱したように泣きじゃくる少年がただ「そこ」にいた。
それを冷えた瞳で見つめていた雷帝の脳裏に電撃が走る。



銀次君・・・・・



花の命のように儚く散った・・・・少女
ファ
「・・・・華・・・」
花月の泣く姿が、今はいない彼の人を銀次の頭の中に蘇らせる。



誰も傷つかなくてもいいのに・・ね・・



最期に微笑みながら言った少女が銀次の目の前に静かに現われる。


『大丈夫・・・・貴方は一人じゃないから・・・・』

ロンファ
  「龍華・・・・」
すっと少女は花月を指差し、花のような微笑を浮かべると幻影は静かに消えた。
「ぁぁ・・・あぁぁぁぁ」
途端に雷帝から先程までの殺気が消え去り、取り巻いていた雷も一瞬にして消え去る。
がっくりと膝を着き、ただ空を見つめているその姿はとても無防備だった。
大きく見開かれた瞳からは涙が溢れ落ちる。
「風雅」のメンバーはただ二人を見守る他なかった。




朔羅が血相を変えて二人に走り寄る。
「さ・・・朔羅・・・・ごめ・・・・ん・・・な・・・・」
ガクガクと小刻みに震えながら言う花月を落ち着かせようと、朔羅は十兵衛の腕を花月から離そうとした。
だが、十兵衛の腕はしっかりと花月を抱きしめたまま離れる気配がない。


この子は・・・・そこまで・・・・


朔羅の中で言いようのない不安が立ち上ったが、今はそれどころではない事に気づき無理矢理花月から十兵衛の腕を引き剥がす。

胸に耳を押し当て、規則正しく動いている心音にホッとしながら急いで止血をする。


でも・・・あれだけの攻撃をまともに受けたら即死だったはず・・・
一体・・・どうして・・・


十兵衛の傷はプラズマによりひどい火傷を被ってはいたが、あの攻撃に対して傷の度合いが異なっている事に朔羅は疑問を感じた。
「朔羅様!!」
取り敢えずの応急処置を終えた朔羅に先程の少女から声がかかる。
「俊樹様が・・・」
「余計・・・・な事・・・・を言うな・・・」
言いかけた言葉を遮ろうと立ち上がる俊樹と朔羅の視線が重なる。
「・・・・何でもない・・・・」
平静を装ってはいるが、明らかに疲弊している。
普段の俊樹ならばどんなに疲れていても、肩で息をするような事はしないと知っていた朔羅は俊樹の下へと走った。
「気に・・・するな・・・と・・・」
そう言った俊樹だったががくりと膝をその場に着く。
「・・・・筧は・・・無事か・・・?」
「ええ・・・十兵衛なら大丈夫よ・・・・。それよりも貴方、一体・・・・」
「俊樹様は遠当てで雷帝の放った雷の軌道を変えられたのです・・・・」
側にいた先程の少女がオズオズと朔羅に言った。


十兵衛が花月の元へ飛び出したのと同時に、俊樹はありったけの気を雷帝の放った雷へと向けた。
俊樹の『気』と雷帝の雷がぶつかり合い僅かに軌道が変わった為、十兵衛の傷も致命傷とならなかったのだ。


「・・・・・大した事じゃない・・・あいつに比べれば・・・・」
朔羅は静かに首を振り、微笑む。
「貴方のお陰でどうやら救われた人がたくさんいるみたいだわ・・・・」
「えっ?」
「ありがとう、俊樹」
真っ直ぐに俊樹を見つめながら、朔羅は優しく微笑んだ。
その優しい微笑みに俊樹は動揺する。
少しだけ頬を染めながら「大した事じゃない」と呟き、急いで横を向いてしまった。


『雷帝』と呼ばれる少年

『絃の花月』と呼ばれる少年


まるで違うのに
何処か同じだと思うのは私だけ・・・・?


この日を境に世界が変わりそうな予感がする


ほんの少しの痛みと
ほんの少しの安らぎが 

私たちに訪れるかしら・・・・・


ねぇ・・・・・



  参    




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