キエナイ イタミ  陸


君が側にいる

君が側にいない

ただ それだけなのに

どうして 気持ちがこんなに違うのだろう



「銀次さん!」
自分より年上なのに、『銀次さん』と自分を呼ぶ相手に振り返る。
「だから、かづっちゃん・・・・」
「『俺の事をさんづけしないで』でしょう?」
くすくすと笑いながら銀次の横にちょこんと座り込む花月に、思わず頬が緩む。

出逢ったあの頃よりずっと髪が長くなって、ぐっと身近になり、自分の側にいてくれる存在。
風雅を解散して自分の元に付くと言って現れた時は、一瞬冗談かと思った。
だがそれが事実だと知り勢力を拡大していくのを担っていく花月。
花のように舞い、血飛沫の中悠然と歩を進める姿にぞくっと鳥肌が立つこともあったけれど・・・。
冷たい視線が『銀次さん』と言って柔らかく優しいものに変わり、微笑みかける花月を見るのが銀次にとって幸せな時間だった。

少しずつ仲間が増え、四天王を従え、恐怖の存在となっていく自分に不安を感じてはいたけど。
VOLTS結成以来、中層階と戦闘を繰り広げてきた。
VOLTSの名は下層階に広まり、一大勢力としてもはや歯向かう者はほとんどいなかった。

「かづっちゃん、彼は見つかった?」
『彼』とは雨流俊樹の事。
黙ったまま首を振る花月に、銀次は小さく「そう・・・」と呟いた。

花月が率いていた風雅の解散を宣言した時、既にその傍らには俊樹の姿は無かった。
それをいぶかしむ者も当然いたが、それよりも風雅の解散の事でその場はざわめいていた。
自分の意志を堂々と伝え、視線を反らさず皆を見据える花月はまさに風雅の王者だった。
その意志に引き付けられ花月の元に残った者、離れて行った者。
それぞれの思いが交錯する中、花月は銀次の前へ現れた。

銀次の元へ来てから3年が過ぎようとしていた。
あの日-----俊樹に風雅を解散すると告げた日から、3年。
時間さえあればこの広大な無限城の中を探していた花月だったが、俊樹の姿は何処にも無く・・・・。
銀次には黙っていたつもりだったのに、何時の間にか彼は気づいていたらしい。
少し驚きながら、花月は今まで何も聞かずにいてくれた銀次の優しさに心打たれた。
「ありがとうございます、銀次さん」
「だから、『さん』はいいってば!!」

慌てる、いつもと変わらない銀次の姿に思わず笑みが洩れる。
自分より年上なのに、自分より器が大きい『彼』の存在に花月はこの3年間圧倒されてばかりだった。
そして、自分の選んだこの選択に間違いはなかったと確信出来る、3年。
あっという間の3年間。

「銀次さん、僕は貴方に出会えてよかった・・・・」
ぽつりと呟いた花月の一言に銀次が一瞬止まる。
「かづっちゃん・・・」
「僕にとって貴方は『光』です、銀次さん」

にっこりと微笑みながら言う花月に、銀次は今まで黙っていた気持ちが溢れ出してしまう。
花月を抱き寄せ、言葉を紡いでいた唇をゆっくりと塞ぐ。
思っていた以上に柔らかい唇。
銀次は逃げ出そうとする花月の腕をしっかり掴んだまま放そうとしない。
「ぎん・・・・じさ・・」
切れ切れに自分の名を呼ぶその声が、銀次の思いに更に追い討ちをかける。
口内を味わっていた銀次の舌が花月の首へと滑り落ち、指は花月の胸を弄り始めた。
「止めて下さい・・・銀・・・っあ!」
胸の突起に触れられて、花月はピクンと反応を示す。
「や・・・だ・・・・」
それでも止めようとはせず、花月の反応を一つひとつ確かめようとした時だった。
「・・・・じゅう・・・べ・・・ぇ」
花月から洩れたその名前に銀次は止まる。
双眸から涙を零し、潤んだ目で訴えかけてくる花月から離れる。
「・・・・かづっちゃん・・・・」
「ふ・・・ぅ・・・っ」
小さく蹲りながら泣き続ける花月に触れようとして手を伸ばす。
「ごめん、かづっちゃん・・・」
震える肩に触れると予想以上に拒絶の反応が伝わる。
それを承知の上で銀次は花月を抱きしめた。
「ごめん・・・でも・・・」
「・・・・」
「かづっちゃんの事・・・俺好きなんだ・・・・」
「・・・・!」
「多分、初めて逢った時から・・・・ずっと・・・」
いつの間にか花月の震えは止まり、銀次の言葉に耳を傾けていた。
花月を抱きしめている銀次の腕に力がこもる。
「ごめん、かづっちゃん・・・・」
何度も繰り返す銀次の言葉に花月は黙って頷いた。
「かづっちゃん?」
「銀次さん」
「何?」
「僕は・・・・」

僕が従おうと決めたのは貴方だけです

そう、耳元で囁き花月は衣服の乱れを直しながら立ち上がる。
「そろそろ戻ります」
いつもと変わらない笑顔で花月は言うと銀次の前から去っていった。



僕が従おうと決めたのは貴方だけです



それは自分の思いを受け入れられないと言う事なのだと、銀次はわかった。
花月が今でも心寄せているのは『あの男』
そう思うとざわざわと心が苛立つ。


これは嫉妬だ・・・・
雷帝になっていなくてもこんなに醜い感情があるんだ・・・


「は・・・ははは・・・」
壁にもたれかかり、銀次は熱くなっていく目頭を手で被う。
「かづっちゃん・・・・それでも俺は・・・・」
今は側にいない花月の名を呼ぶ。
「花月・・・・」


結局、見つけたと思っていたものは違った。
心安らかになる場所にはならなかった。


「誰か・・・・」



     陸 




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